工学系(機械系)で外部の大学院に進学して2年過ごした感想.
こんにちは,CoarsePaper管理人のほりー(@CoarsePaper)です.
僕は東京理科大学という大学から東北大学の大学院に進学した,いわゆる「外部進学組」です.
現在修士2年の終わりということで,この大学院もそろそろ卒業の時期を迎えつつあります.
同時に現在学部3年生の学生さんは,そろそろ進学や就職を決定する時期ですよね.僕はあまり悩んではいませんでしたが,人生の中でも大きめな選択なので悩む人も多いはず.
研究が嫌いでない人にとって,修士課程での生活はたいてい悪くないものです.
科学という世界の最前線,人類がまだ知らない領域を肌で感じることができるのは大学院だけでしょう.
一方で,どうしても性にあわずに苦しい生活を強いられたり,辞めていく人もいます.
そこで進路として修士課程に進学することや,さらには外部の大学院に進学するという選択について,これまで感じたことや考えたことをまとめていこうと思います.
目次
修士課程に進学したことに対して
まぁまず外部とか関係なく,修士課程に進学したことについてどう思っているか書きます.
進学した理由
僕はそんなに勉強が得意だったわけではありません.そもそも高校受験でつまずいて浪人(!)してますし,大学も浪人して第一志望には入れませんでした.
そんな勉強が得意ではない僕が大学院に進学したのは,単純に研究が向いているという直感があったことと,ある分野に対して専門性を持ちたいと強く思っていたという事が大きな理由です.
進学した結果:研究の本質が少し分かった
結果的に自分は研究に対して適性はありそうですが,決めた時点では研究がどういうものかについて正しく認識していませんでしたね.
具体的には,もっと研究テーマはサクッと決まって,実験とか考察をじっくりやってるものだと思っていたんですよ.
研究ってそういうイメージあるじゃないですか.試験管振りながらウンウン唸ってるみたいな.
しかし,研究で最も大事な部分は研究テーマの決定だったんです.研究者って答えを見つける職業というより「問」を見つける職業なのかもしれません.
スケールが異なりますが,MIT Media Lab副所長の石井先生も,よく「造山力」というお話をされています.
【造山力】僕がMITを選んだ理由、それは頂が雲に隠れて見えない高い山だったから、そして頂へと続く道がなかったから。…しかしそれが幻想だったことを思い知る。登頂すべき山なぞ初めから存在していなかった事を。その山を零から創りあげ5年以内に世界初登頂すること、それが生き残りの条件。
— Hiroshi Ishii 石井裕 (@ishii_mit) 2012年11月28日
たくさん他の研究を読んで,面白い研究テーマを考え抜いたら,あとはひたすら手を動かすだけで,ここにあまり研究者的な思考は必要ありませんでした.
専門知識についてはまぁ普段研究して論文読んだり学会に参加していれば勝手についてきましたし,資料も豊富で専門知識はかなり蓄えられたかなと思っています.
他の進学者を見て思うこと
内部進学であれ外部進学であれ,工学系だと修士課程に進む人はかなり多いイメージです.
修士課程になんとなく進学することについて,否定する気はありません.そこそこ研究して卒業していく人がほとんどですし,それで上手く行っている人も多いからです.
しかし,研究室によってはレベルの高い要求をされ,非常に苦しい生活を強いられることも.僕の研究室に限った話をすると1年に1人は中退する学生がいます.
そういう意味で,進学するのであれば,雰囲気や文化も含めて研究室と自分との相性を吟味することが進学する際には大切です.
外部に進学したことに対して
上述したのは修士課程に進むということに関してで,ここからは別の大学の大学院に進学することについて書きます.
理科大は,かなり外部進学が多いという評判もありますが(院試予備校と呼ばれるほどに),これは学科に大きく依存します.
僕の学科では5%程度でしたが,例えば物理学科は50%ほどの学生が外部大学院に進学していました.
外部進学しようと思った理由
僕は触覚の研究に興味があったわけですが,元々いた大学の研究科には触覚を専門としてやっている研究室がありませんでした.
そこで触覚を専門としている研究室をいくつか調べ,自分が提案するテーマで研究ができそうで,大型の予算を持っている研究室を選びました.
つまり外部進学の理由はやりたい研究をやるためというシンプルなものです.
大学院入試の対策は数ヶ月かかりますし不合格のリスクもある上,希望の研究室に入れない可能性すらあるので,一定以上のモチベーションが無いなら避ける方が無難だと個人的には思っています.
外部進学した結果:忙しくも充実した研究生活,そして博士課程へ
自分がやりたいことをやりたいようにお金をバンバン使ってできる環境は最高でした.
同期も(特に高専からの編入組が)優秀で刺激的でしたし,自分も大幅に成長できたと思います.
こうして上手く行ったのは自分が研究したい対象が明確で(入学前からテーマを提案していた),積極的に動けたからだと思います.
外部進学では特に,学部から継続したテーマで研究するわけではないので,高いスピード感をもって研究する必要があります.
そして,進学前から決めていたわけではありませんが,博士課程に行くことにもなりました.まぁまた大学が変わってしまうのですが,やりたいことDrivenだとこうなってしまいがちですね.
博士の進学を決めたことについてはこちらの記事で書いてます.
他の外部進学者を見て思うこと
博士に進む学生は少ないので,修士で卒業する外部進学者の状況を客観的に見た感じについて書いておきましょう.
知る限りみんな就活は上手く行っていますが,内部進学と比較してこれといった違いは無いような印象です.あくまで機械系の人を見た印象ですが.
機械系に関してはほとんど推薦で決まるので,むしろ競争が激しい大学に放り込まれると自分に不利に働くことすらあるわけですよね.
だから最終学歴や就活を気にして外部進学を考えている人も,一度冷静に状況を見つめ直したほうが良いかもしれません.
まとめ
以上が外部の大学院に進学して今まで2年間過ごしてみた感想と進学に対する考えです.
修士に進むことに悩む人も多いと思いいますが,学科やその人の適正によって決定されるので「みんな修士に行ったほうが良い!」みたいなことは言えません.
しかし,「当事者意識をもって自分のために進路を考えるべき」ということだけは言えます.人に決めさせず,自分で動くべきです.流されずに進路を決めた人の多くが上手くやっています.
外部進学に関しては,総合的に言えば僕は肯定的です.短いスパンで環境を変えることは,新鮮な空気と適度な居心地の悪さを与えてくれます.
常に自分をその環境に最適化させる必要があるため,学びが必然的に多くなるんです.同じ場所にずっと留まっているよりもきっと健康的でしょう.
少しでも修士課程への進学,外部への進学の参考になれば幸いです.何か聞きたいことがあればTwitterで聞いてもらえれば答えます.
ではでは〜.