SONY WH-1000XM3使用レビュー.聴覚を調整して生活のストレスを削減しよう.
最近本で読んだ話で,ドイツの生物・哲学の学者であるユクスキュルが提唱している「環世界(Umwelt)」という概念があります.
「環境」という言葉はよく知っていると思いますが,「環世界」という言葉はあまり聞き慣れないのではないでしょうか.
環境は,客観的な外界として僕たちの周りに在るもののことです.
僕は今,喫茶店でこの記事を執筆していますが,この喫茶店が僕の環境になっていますし,他の人,動物にとってもこの喫茶店の「環境」は同じものです.
環境は客観的に存在しているので大きさや重さ,室温などを数値的に測ったりすることもできます.
しかし,一番大事なのはその環境の中にいる人や動物が,自分に関係のある物を選択的に抽出して自分の世界を作っていることです.
例えば,この環境の二酸化炭素濃度は計測することができますが,僕はそれを知覚することができませんよね.
また,この喫茶店は犬と一緒に入店が可能なのですが,犬には色覚がほとんど無いので無機質な灰色の空間として見えているはずです.
つまり,同じ環境の中に居たとしても,動物,ひいては個人がそれぞれ固有の感覚をもち,それぞれの世界を持ちます.
それが環世界と呼ばれるものです.僕が所属しているVR業界における知覚空間とも関連が深いと思います.
さて,この環世界を強く自覚させてくれたのが今回紹介するソニーのノイズキャンセリングヘッドホン「WH-1000XM3」.まさに自分の聴覚を調整してくれるデバイスでした.
この記事ではWH-1000XM3を長時間フライトや日常生活で使用した感想や,効果が大きかったノイズについて書いていこうと思います.
目次
Sony WH-1000XM3 レビュー
外観,つけ心地を簡単に紹介
全体的にサラッとしたマットな質感で大人っぽい印象.
環境音を拾うマイクの周りやSONYロゴはカッパーのアクセントで高級感がありつつ下品さは皆無です.
このように畳むことはできますが,大型のヘッドホンなのでどうしても多少はかさばります.
重量は255gなのですがつけ心地は軽く,耳全体を覆うイヤーパッドと,頭頂部のパッドで柔らかく支えられるので重量によるストレスはほぼありません.
ノイズキャンセリングの性能と有効なシチュエーションについて
正直,ノイズキャンセリングヘッドホン自体初めてなので何かと比較することはできないのですが感動的なレベルで静かになります.
まず,飛行機での効果が非常に大きかったです.
実はあまり意識したことが無かったのですが,飛行中は非常に大きな低周波のノイズが在るようです.
しばらくWH-1000XM3を着用したままでいて,不意に外した時にうるさすぎて驚きました.
この大音量の音を何時間も聞き続けるって結構体に負担かかっていたのではと思うほど.
飛行機で寝ることはあまり得意ではありませんでした.しかし,WH-1000XM3を着用した今回のフライトはかなりリラックスして現地まで寝て過ごすことができました.
また,帰国の次の日が学会での発表だったので帰りの飛行機はひたすらスライド作成.
この時も割と捗りまして,効果を実感する結果となりました.本当にこれには感謝しかない.
フライト以外にも,例えば電車の中や街中の車のエンジン音など,比較的低周波の成分がごっそり消えるなという印象です.
実際,ソニーのサイトに有るスペックを見てもその傾向は間違いなさそう.
人の声はそれなりに聞こえますが,聞こえにくくなるという意味で,内容が聞こえてくることによって気が散るみたいなことがかなり減りました.
ワイヤレスヘッドホンということで,歩きながら音楽を聴いている時のタッチノイズが無いのもストレスフリーで良いです.
音質について
良い意味でフラットな音質な気がしています.
聴いていて楽しい!みたいな感じではありませんが,特に不満もなく,僕の用途では十分な音質.悪い印象は無いです.
ソニーのヘッドホンには専用のアプリがあって,それを使用することでイコライザなどを設定可能なので,好みの音質にはそこで調整できると思います.
一応アップスケーリングなどの処理はされているようですが,特に僕のオーディオ環境では違いはわかりませんでした.
耳元での操作性について
WH-1000XM3は曲のスキップや音量調整をハウジングをタッチすることで操作できます.
有線イヤホンなどについている簡易的なコントローラに比べると,耳の位置にインターフェイスが固定されているので操作しようと思った時にすぐに触れる直感性に優れていました.
左のハウジングの下部に電源ボタンとモードの切替を行うボタンがありますが,押し間違えることは今の所ありません.
モード切替は
ノイズキャンセリングモード→アンビエントサウンドモード→アンビエントサウンドOFFモード
と切り替わっていくのですが,アナウンスの時間が1,2秒あるのが少し長いなと感じます.
まとめ:現代生活のためのDiminished Reality[隠消現実]
冒頭で環世界の話をしました.
僕らにとって大切なのは計測可能な客観的な環境ではなく,自身が感じる知覚の量です.
客観的な環境を,自分にとってちょうど良い主観的な環世界に調整する.それを一番手軽に可能にしているのがノイズキャンセリングの技術だと思いました.
日本のような狭い国では,自分にとって必要としない情報が嫌でも入ってきますからね.
Augmented Reality(拡張現実)の反対として,Diminished Reality(隠消現実)というアイディアが15年近く前から提案されています.
これが実現されることで,今の都市部に溢れている派手な装飾や広告をARゴーグルを通して白く塗りつぶしてしまうことができます.
このDiminished Realityの聴覚的な実装がノイズキャンセリングだと言えるでしょう.
今後ARグラスが一般化し,視覚でもノイズキャンセリングが実現されると思うと,よりストレスが減るだろうなぁと今から楽しみですね.
移住でない方法で,生活における情報過多を解決する手法として,環世界を調整するというソリューションを取ってみてはいかがでしょうか?
ではでは〜.
2 Comments
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[…] 込みは,イヤホンを装着した状態で対人でのやりとりをするときに使うようなもので,僕が以前から使っているノイズキャンセリングヘッドホン,WH-1000XM3 にも搭載されている機能です. […]
[…] こちらがその記事。SONY WH-1000XM3使用レビュー.聴覚を調整して生活のストレスを削減しよう.- Coarse Paper […]