映画「聖の青春」を観た感想。まっすぐに生き抜いた棋士の生き様。

命をかけるという事がダイレクトに伝わる作品でした。

こんにちは、CoarsePaper管理人のほりー(@CoarsePaper)です。棋士というものをご存知でしょうか。

主に将棋や囲碁の対局を行う人を指します。将棋の棋士として有名な人といえば羽生善治三冠ですね。メディアに出ることも多く、天才棋士として本などの執筆もされています。

 

羽生善治三冠の世代は「羽生世代」と呼ばれ、森内さんや郷田さん等、今の将棋界を支えるトップ棋士が揃っています。

その羽生世代の中でも異色なのが「村山聖」。東の羽生、西の村山と称されるほどの実力を見せながら29歳の若さでこの世を去りました。

 

今回はその村山聖の壮絶な人生を綴った映画「聖の青春」を観てきましたので、その感想をまとめたいと思います。ちょっとネタバレも含まれると思うので避けたい方はまた観た後に来ていただければ。

 

原作はこちら。

 

村山聖の強烈で純粋なキャラクターと人生観

この役のために20kg増量した松山ケンイチが演じる村山聖ですが、そのキャラクターは強烈そのものです。

 

出典:http://movie-news.jp/satoshi

難病「腎ネフローゼ」を抱える棋士、村山聖は口下手で上手く人と話せず、髪も爪も伸ばしたまま。服装も無頓着でお風呂もあまり入らず部屋はめちゃくちゃ汚かったようです。

劇中でもそういった描写が多く見られました。

古本屋の店員さんと話す時の演技で、受け答えや視線の動かし方などから落ち着かない感じがリアルに表現されていて、村山聖の人見知りなところが伝わってきます。

 

お酒をガバガバ飲んだり競馬に興じたりする姿を見ると囲碁棋士の藤沢秀行も連想されますね。性質としては似ている天才なのかもしれません。

 

村山聖の人格は、プロ棋士の道を絶たれた弟弟子に煽るような言葉をかけるなど、とても憧れるようなものではありません。

ですが、体調の悪い中でも必死に対局に臨んだり、麻酔を打つと脳が鈍ると言って麻酔無しでの手術を依頼したり、本当にまっすぐに将棋に命を掛けている姿には心が打たれました。

世の中にはまじめに物事に従事している人はたくさんいると思います。しかし、あることに本当に命を掛けられる人がどれだけいるでしょうか。

村山聖の魅力はその将棋に自分の全てをかける純粋さにあると思います。

 

親のように支える森師匠と、理解者羽生の存在

出典:https://twitter.com/satoshiseishun/media

村山聖の人生を語る上で非常に重要になってくるのがまずはリリー・フランキーが演じる森師匠。

大阪で将棋の道を志す村山を親のように支え、看病から身の回りの世話までしていました。師弟関係というと普通逆のような気もしますが、その信頼関係の強さを感じます。

 

 

出典:http://movie-news.jp/satoshi

そしてライバルとして登場するのが東出昌大が演じる羽生さん。

元々羽生さんの近くで将棋を指すことを目的に上京した村山ですから、特別な思いで対局に臨むのが感じられました。

対局の描写はもちろん素晴らしいのですが、人見知りなりに羽生さんとの距離を縮めていく村山のかわいらしさが印象的でした。ライバルであり、あこがれであり、共に将棋という深い海に潜る仲間なのだったのだと思います。

 

ちょくちょく羽生さんの対局は動画で見たりするのですが、仕草や表情などかなり研究されてますね。もう本人のように感じられます。感想戦の時の雰囲気とかも超似てました。

 

一瞬一瞬を刻むような、それでいて駆け抜けるような演出の数々

将棋の対局は数時間、長くなると何日もまたがって行われる長い長い戦いです。

一方で、村山聖の人生は29年間というとても短いものです。劇中でも「時間がない」という台詞が登場するように、村山聖にとっては一瞬たりとも無駄にできない人生だったのだと思います。

 

出典:https://twitter.com/satoshiseishun/media

対局の映像は棋譜を覚えた二人が実際に二時間半に渡って指しあったというのですから驚きです。

対局中に限らず要所要所の演出により、長い対局と短い人生のコントラストがくっきり描かれているように感じました。

 

駒を打つ際のスローモーションなんかはそういった時間的な部分でかなり強く訴えかけてるように思います。

終盤の羽生さんとの対局では回想を含めながら指していく描写があって、盤上での羽生さんとの「対話」がスピード感とともに感じられて非常に良かったです。

 

また、棋士という人生の特殊性も、不意に挟まれる日常風景との対比により描かれていて、とても印象的です。

自分はごく一般的な家庭に生まれてごく一般的な教育を受けてレールの上を走っているような人生なので、こういう生き方をしている人が実際にいると思うと震えますね。

 

まとめ

実際の最後の羽生さんとの対局は動画として残っております。

 

村山聖の背景を知った後だとこの映像もだいぶ見方が変わってきますね。

 

全体的なことを言いますと、村山聖の強烈なキャラクターも相まって、将棋を知らない人でも楽しめる、退屈しない映画でした。

漫画、アニメ共に人気を博している「3月のライオン」で登場する、主人公のライバル「二海堂晴信」は、この村山聖をモデルにしているみたいですので、同作のファンの方も観てみると良いかもしれません。

 

ではでは〜